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- マチエールでクローム調の文字を描く
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- ナウちゃん’S
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- ●はじめに
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- 「クローム調の文字」と聞いて、皆さんすぐにイメージが浮かぶ
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- でしょうか? クローム(クロム)は銀白色をした金属の一種です
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- が、鏡面反射をするメタリック調の表現を指して使われることも多
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- いようです。ここでいう「クローム調の文字」も、「金属調の滑ら
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- かに盛り上がった文字」を指しています。
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- クローム調の文字の例
- ◎ TYPE=CLI:KT p CHROME_S.PIC
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- 実はこの「クローム調の文字」、フォトショップ関係の参考書を
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- 見てみると「ボカシ」「エンボス」「トーンカーブ(ガンマ曲線)」
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- の各機能を組み合わせた応用例として紹介されていますし、ペイン
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- ターには自動生成する機能が備わっています。つまり、この文字は
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- エフェクトの一連の処理によって生成が可能なのです。ここではマ
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- チエールを使ってこの処理を再現する手法を紹介します。多少手間
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- はかかりますが、興味のある方はぜひ一度お試し下さい。
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- ●使う機能とガンマ曲線
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- では先に使う機能、特に「ガンマ曲線」について触れておきましょ
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- う。「ボカシ」はそのまま「ぼかしツール」、「エンボス」はエフェ
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- クトツールの中の「レリーフ(グレー)」で代用出来ます。問題は
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- 「ガンマ曲線」です。残念ながらマチエールにはこの機能は備わっ
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- ておらず、この機能を手動で再現してやることがマチエールでクロー
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- ム調の文字を描くポイントとなります。
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- 「ガンマ曲線」はディスプレイの調整等でお馴染みのグラフで、
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- 明るさの変化の具合を表しています。この曲線の具合によって、
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- ”最も暗い部分から中ほどまでは急に明るくなり、中ほどから一番
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- 明るい部分まではゆっくり明るくなる”など、明るさが一定の割合
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- で変化していない状態を示したり、調整に利用したりするわけです。
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- この曲線のグラフが、グラフィックツールにおいては”現在のドッ
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- トの明るさをグラフで指定した明るさに置き換える機能”として使
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- われています(表1)。
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- ガンマ曲線(表1、2)
- ◎ TYPE=CLI:KT p GAMMA_1.PIC
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- ここで、参考とするフォトショップでのガンマ曲線の使い方を見
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- ておきましょう。普通のガンマ曲線は弓なりに調整するだけですが、
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- フォトショップのガンマ曲線(トーンカーブ)は、グラフを複数の
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- 箇所でドラッグしてやることで蛇行させることが出来ます(表2)。
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- このようにガンマ曲線を蛇行させてやることによって、本来一定の
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- 順序で明るくなっていくグラデーションが一度明るくなった後また
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- 暗くなり、そして再び明るくなります。この明るさの変化がまるで
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- 鏡面の映り込みのように見え、クローム調の表現となるのです。
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- ●ガンマ操作までに行う処理
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- それでは実際に描いてみましょう。とりあえず、ガンマ曲線を適
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- 用する直前までの処理を済ましておきます。工程を画像ファイルに
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- してありますので、そちらを見ながら読むと判り易いと思います。
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- 途中までの工程(図1~5)
- ◎ TYPE=CLI:KT p CHROME_1.PIC
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- 作業に入る前に、システム設定の「ディザー処理」はOFFにし
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- ておいて下さい。ボカシで発生したディザが作業の邪魔になったり、
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- コントラスト調整の時に浮き上がって跡が残ることがあるからです。
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- まず、白地に黒で文字を描きます(図1)。文字はボカシをかけ
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- て膨らませるので、細い方がいいと思います。ここではDF細丸ゴ
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- シックを82ドットのサイズで描画しています(フォントは石田伯
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- 仁氏作のトゥルータイプフォント変換ツール (Vol.107 掲載) で変
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- 換したものを使用)。つづいて文字にボカシをかけます(図2)。
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- ここでのボカシレベルは「3」です。ボカシが終わったら、後の処
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- 理で文字以外の部分に影響が出ないように、周りの白い部分をマス
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- クで覆っておきます。「色変換パレット」の両方に白を設定してマ
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- スクに変換してやるとよいでしょう。次に、ボカシをかけた文字に
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- エンボスをかけてやります。ここではレリーフ(グレー)のレベル
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- 「5」で行っています(図3)。これで浮き上がった文字が出来上
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- がりますが、コントラストが弱いので調整しておきます(図4)。
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- 図4の場合、最も暗い部分:変換前8→変換後0、最も明るい部分:
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- 変換前24→変換後31の設定でコントラストを調整したあと、少
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- しザラつきが目立つのでレベル「2」のボカシをかけてあります。
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- 最後に、そのままの状態だと光が右下から当たっている感じですの
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- で、好みにより「ネガ反転」をかけて左上から当たっているように
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- 変更します(図5)。これでガンマ操作前の処理はおわりです。念
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- のためセーブしておきましょう。
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- ●ガンマを疑似再現する方法
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- 下準備が出来たところで、ガンマ曲線の機能をマチエールで再現
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- する手法について触れておきましょう。ガンマ補正用のプログラム
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- を使ったりするわけではありませんので、なにか他の処理の組み合
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- わせで疑似的に再現してやるわけです。まず、先ほどの蛇行したガ
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- ンマ曲線、これを直線に見立てるところからはじめます。
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- ガンマ曲線を疑似的に再現する(表3、4)
- ◎ TYPE=CLI:KT p GAMMA_2.PIC
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- 曲線の上がり下がりの切り替わる部分を頂点として直線で結んで
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- やると、折れ線グラフのように見立てることが出来ます(表3)。
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- そして、通常の真っ直ぐ伸びたガンマの線を、この直線に見立てた
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- グラフと同じ折れ線になるようにする手法を考えればいいわけです。
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- ここでまず中ほどの右下がりになっている部分に注目します。明る
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- さが逆に暗くなっていっているということは、この範囲はネガ反転
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- を用いれば再現出来るということです(表4-1)。ただし、ここ
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- を反転しただけでは前後との明るさの連続性が途切れてしまいます
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- ので、前後の右上がりになっている部分も操作してやらなければい
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- けません。これにはコントラスト調整を使います。中央の反転でズ
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- レた分だけコントラストを操作して、明るさの連続性を持たせるの
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- です(表4-2)。
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- ●実際の操作
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- それでは実際の作業を見ていきましょう。図を見ながら読んでみ
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- て下さい。
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- クローム調にする工程(前)(図6~10)
- ◎ TYPE=CLI:KT p CHROME_2.PIC
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- まず始めに、作業の手助けのために、画面の使わない領域か裏画
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- 面に3本のグラデーションを用意します(図6)。これは、グラフ
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- の左側部分、反転した中央部分、右側部分に分けたグレースケール
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- のグラデーションで、カラーマスクを採るために使います。図では
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- マチエールのRGB100段階表示の0~38、41~60、63
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- ~100で分けています。もうひとつ作業の手助けのために、今作っ
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- た中央のグラデーションの濃度分布表を作成しておきます(表の作
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- 成はエフェクトメニュー内の「ヒストグラム作成」でグラデーショ
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- ンを矩形で囲って行います)。おおむね図7のようになったと思い
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- ます。これはあとでコントラストを調節する際の目安になります。
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- では先ほどの手法の通り、明るさの中央部分をネガ反転しましょ
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- う。ここではまず中央部分のカラーマスク(カラーマッチング)を
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- グラデーションから採り、明るさの中央部分だけ処理を有効にして
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- マスクツールでマスクをかけ(図8)、画面全体のマスクを反転し
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- たのちネガ反転ツールで明るさを反転します(図9)。この時、カ
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- ラーマスクはONのまま行って下さい。文字の周りの色も反転され
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- てしまうためです。これでグラフの中央部分の明るさが右下がりに
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- なりました(表4-1の状態)。次に明るさの連続性が途切れた部
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- 分をコントラスト調整でつなげてやります。画面全体のマスクを元
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- 通りに反転し、今度は暗い部分のグラデーションからカラーマスク
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- を採ります(中央の分は先に初期化して下さい)。暗い部分だけを
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- 有効にしてコントラストの調整を行います(図10)。
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- クローム調にする工程(後)(図11~15)
- ◎ TYPE=CLI:KT p CHROME_3.PIC
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- 補正前の範囲を折れ線グラフの左部分(図の例での数値は0~12
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- まで)、補正後の範囲は左部分と中央部分(同じく0~18)に設
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- 定します。この際、先ほどとっておいた濃度分布表と、その下にあ
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- るコントラスト範囲を示す2本のバーを見ながら数値を調整すると
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- 感覚的に調整できます。図11のようにバーの白い部分を濃度分布
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- 表の山に合わせてやればいいわけです。数値の設定が終わったらコ
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- ントラスト調整を実行します(図12)。つづいて明るい部分のコ
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- ントラストを調整します。明るい部分のグラデーションからカラー
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- マスクを採り(暗い分は先に初期化)、補正前の範囲を折れ線グラ
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- フの右部分(図の例での数値は19~31)、補正後の範囲は右部
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- 分と中央部分(同じく13~31)に設定します(図13)。コン
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- トラスト調整を実行してマスクをはがすと、クローム調の文字がほ
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- ぼ出来上がります(図14)。そのままではコントラストが弱いの
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- で濃度分布のヒストグラムをとり、適度にコントラストを強めて完
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- 成です(図15)。
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- ●その後の加工
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- 一連の作業はグレースケールで行うためそのままでは白黒ですか
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- ら、後処理で色を付けることになります。
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- 後処理による着色例
- ◎ TYPE=CLI:KT p CHROME_E.PIC
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- 着色には「色調整」メニューを使います。明るい部分に色を付け
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- たい時はRGB調整で、暗い部分の場合はCMY調整で調整します。
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- 他にも彩度調整やコントラストなども使って望む色に調整します。
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- この時、そのまま処理すると文字以外の部分も色が変わってしまう
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- ので、始めの方の工程(図2ぐらい)の画像を保存しておき、マス
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- クとりに使うといいと思います。簡単な文字の場合なら色が変わっ
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- てしまったところをペンイトで塗りつぶしていく方が楽かも知れま
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- せん。
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- また、アンチエイリアスをかけたい時ですが、工程の上では考慮
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- していませんのでファインズームの縮小によるオーバーサンプリン
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- グに頼ることになります。地色が単色でよい場合は大きく描いてお
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- いてファインズームで縮小するだけで済みます。別の絵に入れる場
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- 合にはファインズームで縮小したものをクリップコピーでコピーし
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- ます。うまくいかない時は地にする絵を先に判り易い倍率(整数倍
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- など)で拡大しておき、そこに大きく描いた文字を合成したのち、
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- 元の倍率にファインズームで縮小するなどしてください。
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- ●おわりに
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- マチエールで描くクローム調の文字、いかがでしたでしょうか。
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- 仕組みの再現がややこしく実作業の手順も多いので、思ったより長
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- い文章になってしまいました。はじめはてこずるかも知れませんが、
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- 元々の仕組みを覚えておけばなんとかなると思いますのでいろいろ
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- 試してみて下さい。X68000で絵を描く際の表現の幅が少しで
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- も広がれば幸いです。
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- ●おまけ(水面みたいな模様)
- ◎ TYPE=CLI:KT p CHROME_O.PIC
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- (EOF)